2012年12月25日火曜日

「国家のためのお産」として

私の調査した離島や山村では、敗戦前後まで免許持ち産婆は存在せず、そのような中で出産した女性たちは一様に「お産は澗分か産むものだ」と認識していた。とくに人口の多い都市部でもない限り、お産は生活のIコマであり、その時、人手が必要だから助け合う、つまりお産の時の手伝いは、「村落共同体における相互扶助的な助力」であった。

その互助的な側面が拡大したのが、とりあげ婆さんで、その報酬も、通常は礼はなしか大変微々たるものであった(野忽那島では無報酬、岡村島ではそうめん数輪、上須戒ではその時の一度の食事と聞いた)。そのうえ、通常なら村人はそういう人をやとわず、姑や実母をとりあげ婆さんとして産んだのである。

こうして明治維新から末にかけての四五年間に、為政者の肝煎りによって強力に導入の図られた近代西洋医学思想と伝達系としての教育制度の整備・’浸透は、それまでの日本人の持つ伝統的な身体観やそれに付随する医概観、あるいは倍習を徐々にだが非常に人きく変えてしまった。身体観とか生命観、つまり自分の生〈叩や存在のあり方全各々の文化の中で人々が、どのよう仁認識するかということは、人変服大な問題である。例えば近頃でも厄年だと仰心など持ち合わせていないように思える人でも、厄年だから、御利益のあるOOさんへおまいりして来たとか「○いさんにおまいりしておいたら気分がしゃんとするから」などと言うことがある。

私などはそんなに御利益があるのなら、丁度くらいまいりしてみてもいいなとは思うのだが、もし、おまいりして御利益があったのに、お礼まいりに出かけられないとか、次の厄年にもし、都合が悪くて行けなかったりした峙、何か斤期廿ぬことが発心するのではないかとそのことが気になって出かけられない。これらはいずれも表而的にはづ神なんているはずがない」と否定しながら、心の奥深くで神の存在をけ定し、自分たちの生命の竹理が‐に見えない神の力によってなされているのだということを、相当強く意識していることになる。

つい最近まで北部オーストラリアに住かアボリジニの間で恐れられたヴードーデス「呪いによる死ごという病いは、病気と治療の文化人類学によれば、長老や祖先の霊のいかりにふれ、指導行の呪出や邪術にかけられたと知った時、その恐怖のあまり、それまで頑健であったものが短期間に衰弱し、死亡して行く現象である。また周囲の人々も、その本人をもう死をまぬかれない病人として遇し、死に向かっての準備を始めるという文化的病いとして、大変合名なものである。

これなどは、人間の心(思考様式)が、いかに簡胆にWHO(世界保健機関)の決めた病気の規準などを飛び越して、その身体を殺してしまうのかをよくわがらせてくれる。これと同じように、明治以前の‐本人も[然現象から人間が感じる快、不快や生死、あるいは諸物の暑寒湿燥などの性質、さらには目にみえない神や物の気や言などの起こす事象を、すべて陰と陽とに対比し、それを宇山の根源的な変動リズムであるととらえ、すべての事象はこの支え合う二元的大系によって説明されうるという思考様式(宇宙観)を持っていた。したがって身体もまたすべて陰と陽との諸体液や経絡、感情などのバランスのLに支えられていると考えていた。

これはもともと古代中国の陰陽道といわれる宇山哲学に由来するもので、前二世紀の作といわれるつ易経」にも盛り込まれているという。日本には古くから取り入れられ、世紀中頃、天武天皇が、その仕事をつかさざる陰陽寮をもうけた頃が一番盛んだったらしい。その後、陰陽思想は絶えることなく、肯定的に目本人の心に引きつがれ、徳川時代には国家組織にも組み込まれて、深く人々の心に浸透していた。しかし明治政府は長い歴史のあるこのような考え方を迷信として弾圧し、科学的根拠にもとづくものとして、近代西洋医学のみの導入を図った。

2012年9月12日水曜日

小型辞典をえらぶ注意点

小型辞典をえらぶときに、わたしの経験上、ひとつだけ注意点がある。それは、純粋な国語辞典をえらんだほうがよい、ということだ。純粋なというのはへんな形容かもしれぬが、じっさいに市販されている辞書を見ると、国語辞典と銘打ちなから、ずいぶん、ほかにいろんな用途を兼ねているものが多いのである。
 
たとえば、ことぱとその意味、という本来の国語辞典であると同時に、そのことばをローマ字化するとどうなるか、とか、ペン字で書くときには、どうくずしたらいいか、とか、ひどいときには、これが和英辞典も兼ねていて、そのことばを英語ではどういうか、まで記載されているのである。

それは、一見したところ、便利そうにみえる。しかし、小型の辞書というのは、もともとが、ぎりぎりの字数で無理をしてつくられているのである。そこへもってきて、あれもこれも、というので、和英兼用、ペン字の書き方兼用、と欲張ってつめこんでいるのだから、この種の辞書は、結局のところ、どこをとってみても不完全になってしまうのである。国語辞典としても満足とはいえないし、和英としても、ほんの気休め程度だから、便利そうで、じつは役に立たない。

それは、いわば、ナイフのほかにカン切り、セン抜き、ハサミ、もろもろの刃物を組みこんだ十徳ナイフのごときものだ。あれにもこれにも使えます、と香具師が縁日で説明しているのをきくと、なるほど、便利そうだ、というのでわれわれは、つい買ってみょうかという気になる。しかし、じっさいに使ってみると、いっこうに役に立たないのである。ナイフとしても不完全だし、セン抜きも、カン切りも、中途はんぱで、実用からは、ほど遠い。あれもこれも、という欲張りの兼用は、おしなべてぐあいがわるい。

2012年8月22日水曜日

万能兼用辞典(シソーラス)

まったくおなじことが、万能兼用辞典についてもいえそりだ。国語辞典は国語辞典そのものであるのがよい。ベソ習字用には。専門のお千本帳があるし、和英辞典は和英辞典としてちゃんとまとまったものがある。ナイフはナイフ、セy抜きはセン抜きで、独立の道具をべつべつに使うほうが賢明なのだ。

しかし、国語辞典というのは、はっきりと書かれたことば、書こうと思っていることぱの意味をたしかめるためには便利かつ必要にちがいないが、適切なことばをさがすためにはあんまり役に立だない。だいたい、前言語的段階での人間の感覚的世界というのは、もやもやした性質のもので、なんとなくぼんやりと意味はじぶんなりにわかっているが、それをどういうことばであらわしてよいか、わからないことか多いものだ。いったい、じぶんのいまの経験を、もっとも適切にあらわすことばはなにか?それをさがすのには、「シソーラス」というものがある。

「シソーラス」とはなにか。それは、ことばを。その使われる領域別に整理して、われわれをとりまく環境をことばによって体系化したもの、とでも名づけたらよい。じぶんがことばによって表現したい領域は、ちゃんとわかっているわけだから、その領域についてシソーラスをひけば、適当なことばと関連したことばが、ゾロゾロといもづる式に出てくる。

英作文をしようとする人には、こうしたシソーラスは必携の辞典である。同義語や反対語をもとめるのも容易だし、ことばをいわばグループ別に学習できるので便利だ。日本語のシソーラスはどうか。林四郎によると、天明年間に柴野栗山の編になる『雑字類編』という辞典かあり、これか関連語や同義語をあつめた近世的シソーラスであったという。こんにちのものでは、英語のモれにくらべれば、はるかに知られていたいが。国立国語研究所のつくった『分類語彙表』がある。ことばさがしには便利なものだ。

2012年7月10日火曜日

政策の連続性を担保

与謝野馨経済財政担当相は30日朝の閣議後会見で、民主党が前日の代表選で野田佳彦財務相を新代表に選出したことについて「政策の連続性が担保できた。ほっとしている」と感想を述べた。

与謝野担当相は、社会保障・税一体改革をともにまとめた野田氏とは「仕事一本やりの付き合いだった」としながらも、前日の候補者演説で野田氏が「普段主張していることを、ひとつも曲げずに真正面から主張した。これが政治家の本当の姿でないか」と高く評価。「首相は慎重かつ大胆にものをやらないとならない」が「たぶんその期待に十分応えられる」とした。

さらに「たびたび出てくるのは、高い成長率が達成できるとか、金利は安く抑え込めるとか、いろんな俗論」と、民主党内にある高い経済成長を目指す「上げ潮」論をあらためて否定。「昨日の代表選挙を見ても、最終的に民主党はその俗論に惑わされることなく、代表を選んだ」と述べた。

今年1月に経財相へ就任した自身に関しては「日本経済はいくつかのぜい弱性の上に成り立っている」と指摘した上で「経済の将来にもう少し警鐘を乱打すべきだった」と振り返った。特に、東日本大震災発生後は経済が「底抜けするのではないかと心配した」という。

同時に、サプライチェーンがほぼ復旧した現状でも、来年の電力供給が企業の生産計画などに不透明感を与えていることに懸念を示し、今年7月に政府が大口需要家に1 5%の節電を義務づける使用制限令を発動した際、経済産業省が策定した原案では制限幅が30%だったことを明らかにした。原案は生産現場の電力供給も制限するものだったため「経財相として経産省の事務方と大喧嘩をした。経済を支えるには生産拠点に電力が供給されることが一番大事」だと主張し、15%削減に変更したことが「政策的に一番大きく戦った」ことだったという。

閣僚として支えた菅直人首相に関しては「まじめで仕事熱心。世間で言われている人間像とは、およそ違うものがあるといつも思っていた」と評し、一体改革の政府案などを取りまとめたことに「政治家としての努力に深く感謝したい」と述べた。

2012年6月19日火曜日

年金問題「年金認めろ」暴力270件

年金記録に誤りがあるとの申し立てを受け、記録を訂正すべきかを判断する総務省の「年金記録確認第三者委員会」に対し、申立人が職員を脅迫するなどの暴力的行為が発足後2年間で約270件起きていることが分かった。中には暴力団を名乗り年金支給を強要する明らかな行政対象暴力もある。支給へのハードルの高さや審議の不透明さが、現場の職員を危険にさらしている。

「今から社会保険庁と厚生労働省に殴り込み、暴れてきます」。関東地方の第三者委員会職員は昨年11月、申し立てを却下した男性に電話でこう告げられた。元厚生事務次官宅連続襲撃事件があった直後。予告された事件は起きなかったが、同様の暴言は京都などでもあった。

地方委員会などによると、暴力的行為は東京、大阪、愛知など都市部で多い。福岡県では申立人が「記録を訂正しないならここで自殺する」と半日間事務所に居座った。茨城県では申立人が事務所でナイフを出し年金支給を迫ったほか、職員の個人宅を突き止め「早く訂正しろ」と深夜に電話をかけ続けた申立人もいた。暴言の多くは職員を「殺す」といった内容で、年金が支給されるよう職員に不正を迫った例もある。

また、暴力団や右翼団体を名乗り支給を迫る行政対象暴力も相次ぎ、中央委員会は昨年1月、警察庁に支援を要請。東京や大阪の地方機関に警察官約10人が派遣されている。だが警察に通報されたのは一部とみられ、首都圏のある職員は「申立人と直接話し合う現場の職員が個人で抱え込んでいる場合も多く、氷山の一角」と話している。

同委員会は社保庁に記録がない人の救済のため、07年6月に発足。申立人の証言や証拠を基に、記録の訂正が妥当と判断すれば社保庁に年金を支給するようあっせんする。だが物証なしで認められるのは困難で、今年6月現在、審議した計6万5461件のうち訂正が妥当とされたのは4割の2万6311件。

審査に時間がかかることへの不満も強い。暴力的行為の2割強は却下後に本人が説明や撤回を求めてきた例で、審議が非公開であることも一因とみられる。

2012年6月13日水曜日

再生可能エネルギーへの関心が急速に高まっている。

ドイツ、日本、米国の3国が世界市場の88%を独占している太陽エネルギー市場において、ドイツ、日本に大きく水を開けられた米国は市場奪回を目指し様々な振興政策を打ち出している。

地球温暖化ガスの排出量削減、自国におけるエネルギー自給力の確保と云った背景から再生可能エネルギーへの関心が急速に高まっている。1995年から2004年までの10年間、世界の太陽光エネルギー生成量は年率平均32%の伸びを示しており、特に2004年は前年比45%といった際立った数字を示している。アメリカにおけるエネルギー消費量は1993年以降上昇傾向を示し、特に2007年以降から著しい消費増加が見込まれている。


エネルギー消費量を燃料別に捉える場合、石炭を原料としたエネルギー依存は2005年を境に全エネルギー消費量とほぼ並行する傾斜で拡大傾向を示している。天然ガス、原子力は2016年から2019年を境に消費量の伸びは上限に達し、微量ではあるが2029年までの見込みはほぼ同一か、若しくは微量に減少傾向を示す。石炭の伸びと比較するとその傾向カーブは小さいが、水素を除く代替えエネルギーの消費量は、2029年に向け安定した伸びを示すものと予測されている。


太陽光エネルギー、バイオマス、風力、燃料電池などといったクリーン?エネルギー世界市場は2015年までに4倍以上に拡大し、1,672億ドル規模に拡大し、太陽光エネルギーは全体の30%を占めるものと見込まれている。

一方において、太陽光発電セル製造市場占有率は、世界市場全体の8.75%に留まっているといった厳しい数字が示されている。2029年に向け拡大するアメリカのエネルギー消費、微量ではあるが代替えエネルギーによる供給増が見込まれているが、実情は日本と欧州に大きく遅れをとっている。

この状況を打破すべく、米エネルギー工業界は「太陽光エネルギー産業ロードマップ」を打ち出している。このロードマップは、2004年9月にDOE Energy, Office of Energy Efficiency and Renewable Energy, Solar Energy Technologies Program の協力の下にPV、インバータ、システム、機器、材料などの製造メーカに加え、電力事業者、大学、太陽光エネルギーの開発、ポリシー策定者などが参加し、作成されたものであり、「2030年を目標にアメリカにおける太陽光エネルギーの競争力、市場、供給源を確立し、2025年迄にアメリカの新しい電力生成量の50%以上を太陽光エネルギーから生成する」といった目標を立てている。

2012年5月23日水曜日

改革の原点だった大蔵省

東京・霞が関の官庁街のほぽ南端にある大蔵省。戦時中の一九四二年に建てられたグレーのタイル張りの地味な建物は長らく、「官庁の中の官庁」として霞が関に君臨してきた。道路に面したアーチ形の正面玄関の左の門柱には「大蔵省」、右側には「国税庁」の看板が掲げられている。

いずれの看板も、同省出身で、六〇年代の高度成長の立て役者となった池田勇人元首相が書いた字を銅板に浮き彫りにしたものだ。このうち「大蔵省」の看板は二〇〇一年一月六日までに外され、代わりに「財務省」の看板が掲げられるはずである。同日からは、財務省としての新しい歴史がスタートする。

大蔵省という名称は、古代日本が当時の世界帝国、隋・唐に習って国家制度を離え始めた七世紀の律令制の昔から続いてきた。また、「大蔵」という名前だけに限れば、五世紀後半の雄略天皇の時代にまでさらにさかのぼれる。その由緒ある名称が変わるということは、日本の官僚機構にとって大きな意味を持っているといえよう。この名称変更は、同日から実施される中央省庁の再編に伴うものである。そして、この省庁再編の原点が大蔵省改革だったのである。

ただ、これに伴って、他の多くの省庁のように新たに再編・統合があるわけではない。それは、再編がすでに前倒しされ、国内の金融行政に関する権限のほとんどを、二〇〇〇年七月一日に発足した金融庁に譲り渡したからだ。

財政政策と金融行政は大蔵省の権力のいわば「車の両輪」だった。かつて何度か、予算編成権を握る主計局を大蔵省から内閣直属に移管しようとした動きがあったし、金融行政部門を分離しようとした改革案が出たこともあった。しかし、それら「大蔵解体」論は九〇年代まではことごとく、大蔵省の力によって退けられたのである。

だが、九〇年代半ば以降、個別の大蔵官僚たちの「非行」やスキャンダルが目立ち始め、九八年初頭にはついに「大蔵省金融汚職事件」にまで発展した。これらスキャンダルや事件と絡み合いながら、九四年暮れ、東京のふたつの信用組合の破綻から始まった金融不安やそれに伴う数々の金融行政のほころびも目立ってきた。

こうした情勢から、世論や政治サイドが求めた金融行政の分離論に対して、大蔵省は抵抗しきれなくなった。この結果、金融庁やそれに先立って金融監督庁、金融再生委員会などが発足し、大蔵省の金融行政部門は次第に奪われていったのである。

そして、大蔵省改革はやがて日本の官僚機構全体の改革につながり、九六年秋から、当時の橋本龍太郎首相の主導で行政改革論議が始まった。二〇〇一年一月からの中央省庁再編は、この橋本行革がそれなりに結実したものである。官僚機構の抵抗を排して、省庁の数を減らすことには成功した。しかし、当初意図したような、行政機構の簡素・効率化にはほど遠いようだ。

改革の原点だった大蔵省は一連の再編で、金融行政は分離された。しかし、権力の最大の源泉である予算編成権を握る主計局、そして税務調査権を持つ外局の国税庁は保持し続ける。国税庁の税務調査権は一種の「警察権」であり、政治サイドの攻勢から身を守る強力な武器となる。つまり、大蔵省の表と裏の権力を代表する部門は、新生・財務省になっても残るのである。

大蔵省は確かに、汚職事件以降はかなり意識して身をすくめ、世間に対して「恭順」の意を示していた。だが、潜在的な力がなくなったわけではIなく、今でも強力な権限を持っているのである。大蔵官僚たちは、これらの権限を目立だなく行使することによって、かつてほどではなくてもかなりの力を振るえるはずだ。

2012年5月11日金曜日

海外で引き受けた株や債券などの金融商品

「市場混乱から実体経済への波及など経験したことのない混乱の影響を受けた」。野村HDの仲田正史・財務統括責任者(CFO)は24日の会見で、金融危機による打撃の大きさを振り返った。

昨年秋のリーマン・ブラザーズ破綻(はたん)のあおりもあって、米低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)関連などで、約3000億円の損失を計上。リーマンの欧州・アジア太平洋部門などを買収したことに伴い約8000人を引き継いだことなどで、約2300億円の費用がかかった。投資、買収した企業の経営不振に伴う評価損なども響いた。

相場に左右されない収益構造づくりを目指し野村は、証券引き受け、M&A(企業の合併・買収)仲介などの投資銀行業務や企業買収部門の強化を進めてきた。だが、顧客から株、債券売買時の手数料を受け取る従来型の証券業務と違って、投資に伴い大きなリスクを負うことになった。

金融危機後、米の投資銀行、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーは相次いで銀行持ち株会社に転換。本場、米国ですら金融技術を駆使し、少ない資金で巨額の投資をする投資銀行業務を収益の柱にするビジネスモデルは難しくなっている。

野村にとっても08年度は「お荷物」の存在になった。野村の業務部門のうち、通期で黒字を確保できたのは、従来の証券会社としての販売力の強さを背景にした国内営業部門と資産運用部門だけだった。

ただ、リーマン買収により、M&A仲介業務など伝統的な投資銀行業務には明るさも見え始めている。野村が今年に入って成立させた大型の資本提携のうち▽キリンHDによるフィリピンのビール最大手サンミゲルビールへの出資▽中国アルミ大手のチャイナルコによる英豪資源大手のリオ・ティントへの出資は、いずれも旧リーマンのアジア太平洋部門がもたらした。M&A仲介や、これに関連した資金調達などで投資銀行業務の拡大に成功すれば、海外で引き受けた株や債券などの金融商品を国内の強力な販売網で売りさばく相乗効果も期待できる。

シナリオが思い通りに進むかは、世界経済の先行き次第。仲田CFOは「(統合効果の)芽は出ている」と強調すると同時に「今時点で経済全体がどう動くが見通しづらい。リスクはまだある」ことも認める。

2012年5月9日水曜日

交通機関同士の競争は激烈

減少傾向の航空機と対照的に、利用者が増えているのが高速バスだ。「昨年末あたりから、ビジネス客の利用者が増え始めました」と話すのは、東京や大阪などの都市圏に向け高速バスも運行する伊予鉄道(松山市)の担当者。バス利用の主力は里帰りの学生や観光客ではあるが、昨年末以降、東京、大阪の利用状況は大きく上向き、増便対応を取る機会が多くなった。

なかでも比較的距離が短い大阪については、交通機関同士の競争は激烈だ。松山から大阪までの運賃を比較すると、航空機が正規の往復で約3万円なのに対し、バスは約1万2000円と半額以下。また、JR四国は岡山までの特急と新幹線をセットにした「阪神往復フリーきっぷ」で対抗し、有効期間によるが往復で1万6~7000円。

時間では航空機が有利だが、割安な運賃などを勘案すると利用目的ではバスや鉄道の利点も多い。業界関係者は「ビジネス客は、出張などで移動経費が抑制されるとどうしても航空機から、バスや鉄道にシフトする傾向が顕著」と話す。

利用が伸び悩むなか、円高・ウォン安の影響で、昨年末からソウル便の搭乗率が急上昇中だ。ソウルへは韓国のアシアナ航空が週に6便運航しているが、昨年末まで40~60%で推移していた搭乗率は今年2月は84・3%を記録。同社によると7~8割の乗客が女性といい、ほとんどが買い物や観光目的という。

3月中旬にソウルから帰国した女性会社員(34)は「好きなブランド品を安く手に入れるには今しかないと思って旅行に出かけました」と話す。各旅行会社は次々と韓国への旅行商品を販売しており、同社の担当者も「1~2月の閑散期に多くの利用があるのはありがたい限り」と打ち明けた。

松山空港利用促進協の関係者は「国内、また本県の経済のためには、日本人が海外へ出かけるのではなく、韓国など海外から客を呼ぶことが本来的に重要」と複雑な表情を見せていた。

2012年4月26日木曜日

日航は国土交通省の監督下

経営再建中の日本航空は7日、国際線を中心に不採算路線について大幅な廃止・減便に乗り出す方針を固めた。それに伴う人員削減にも踏み切る構え。日航は日本の航空会社として最大の路線網を維持してきたが、事業規模をいったん縮小して再出発を図る。

日航は既に国内・国際の計26路線の廃止、減便を決めているが、大幅に上積みする。具体的には関空-大連、関空-杭州など、関空発着の国際線を中心に縮小を検討しているもようだ。国内線の一部についても整理を進める方針で、計数十路線が廃止・減便の対象となる見通しだ。

景気悪化の影響で、日航は採算ラインとされる搭乗率60%を割り込む路線を多数抱えている。特に中国路線は搭乗率が40%台、国内も30~40%台に低迷している地方路線が多く、大規模な路線の見直しで運航コストの軽減を図る。

縮小に伴い、余剰となる人員の削減も行う。採用抑制などによる自然減や早期退職制度の活用により、約4万8000人のグループ社員のうち一部を削減したい考えだが、労働組合との協議が難航することが予想されるため、削減規模についてはさらに詰めの作業を行う。

日航は国土交通省の監督下で経営改善計画を策定中で、国交省は有識者懇談会を設けるなどして同社に抜本的なリストラを迫っている。国交省は従来、国策として「航空路線網の維持」を日航に求めてきたが、同社の経営悪化を受けて方針を転換。「企業の存続、再生が第一。路線網を縮小し、収益力が回復した後に再度ネットワークを構築してもらう」(幹部)と路線縮小を求めている。

2012年4月10日火曜日

4月以降も継続することを

地方空港は今、国際線や国内基幹路線を多数抱える大都市の空港とは違い、利用客の増減によってその環境が目まぐるしく移り変わっている。松山空港でもこれまで「ドル箱路線」と呼び続けられてきた東京便が年明け以降、景気悪化に伴ってビジネス客の利用が減少。一方、ウォン安により国際線のソウル便は80%以上の搭乗率を記録している。4月から大手航空各社が大幅減便などを決めているなか、地方交通の現状を松山空港から探ってみた。

搭乗率の採算ラインとされるのは一般的に60~65%とされている。年間約150万人が利用する東京便。搭乗率は昨年11月までは70%を超えていたが、顕在化した景気の落ち込みの影響から、12月、1月と連続して一気に60%を割り込んだ。愛媛県庁に事務局を置く松山空港利用促進協議会は「不況の影響で企業が出張を手控えたことが大きく影響している」と分析している。

新幹線といった高速交通機関との競合がないこともあり、日本航空は昨年11月に実施した1日5便の増便を4月以降も継続することを決めているが、より深刻なのは大阪便だ。

とりわけ関西空港は大阪南部という不便さなどから、航空各社が相次いで同空港発着の各路線の減便や廃止を決定しているが、松山空港から1日6便(3往復)を運航する全日空の減便の判断の行方も注目されている。一方、伊丹便は2月の機材変更もあり、日本エアコミューターを含めた搭乗率は70%弱まで回復したものの、月間の搭乗者数は1万人近い落ち込みをみせている。

2012年4月2日月曜日

核密約を米で調査と鳩山氏、首相は民主批判加速

民主党の鳩山代表は23日のテレビ朝日の番組で、日米両政府が核兵器搭載の米艦船の寄港を黙認する密約を交わしたとされる問題について「(密約は)あるという蓋然(がいぜん)性が高い。まず米国に行って調査するが、しかるべきタイミングで国民にきちんと説明する」と語った。

そのうえで、核の持ち込みについて「なくさないといけない。覚悟を持って臨むしかない。オバマ大統領を説得して、持ち込ませないということは十分できる」と語り、非核三原則の一つである「持ち込み」禁止を米側に求める考えを示した。

 また、年金記録漏れ問題の解決について「100%はできない」との見通しを示し、「領収書や証拠がなければだめと言っていたら、らちがあかない。ある程度の条件が満たされたら一括的な補償をすることで解決するしかない」と語った。

同党は政権公約(マニフェスト)で、年金記録漏れ問題への対応を「国家プロジェクト」と位置づけて2年間集中的に取り組むことをうたっている。鳩山氏の発言は「政権獲得後、全容解明ができなければ公約違反と批判されないように先手を打った」(周辺)ものとみられる。

終盤の戦略など幹部ら意見交換 鳩山氏と小沢、菅両代表代行、岡田幹事長、輿石東参院議員会長は23日夜、党本部で約1時間にわたって協議した。

報道機関の衆院選情勢調査で「300議席を超す勢い」など序盤情勢が明らかになったことを踏まえ、終盤の選挙戦略や、選挙後の対応などについて意見交換したとみられる。

麻生首相(自民党総裁)は、千葉県市原市での街頭演説で「北朝鮮貨物検査特別措置法案は民主党が参院で審議拒否し、結果的に廃案になった。北朝鮮が一番喜んだ」と民主党の対応を批判。

民主党が新テロ対策特別措置法や海賊対処法に反対したことを指摘し、「こういう政党に日本の安全保障を任せるわけにはいかない」と力を込めた。国旗を切り張りして作った党旗を集会で掲げた問題も「ふざけている」と批判した。