いわゆる粉飾決算は継続開示書類の虚偽記載となって表れますが、粉飾決算をした企業が倒産していない段階で虚偽記載に対する刑事訴追を行うと、企業を上場廃止や倒産に追い込み債権者や株主に不利益を及ぼすことから、従来、継続企業に対する刑事訴追はあまり活発に行われていませんでした。課徴金制度が導入されてからは、粉飾額が大きく悪質なものに対しては刑事訴追を行い、粉飾の程度が軽微なものには課徴金賦課手続を開始するといった形で刑事罰と課徴金の棲み分けが行われているようです。そこで、課徴金納付命令が下されても企業が上場廃止とならない例も出ており、課徴金制度は継続開示書類の虚偽記載に対して活発に適用されています。ただ、従来の算定方式では課徴金の額が低すぎて十分な抑止効果を発揮できていない嫌いがあったことから、平成20年改正により、課徴金額が引き上げられました。
引き上げ後の課徴金の額は、有価証券報告書の場合、600万円と有価証券の時価総額に10万分の6を乗じた額のいずれか多い額、半期報告書・四半期報告書・臨時報告書の場合、300万円と有価証券の時価総額に10万分の3を乗じた額のいずれか多い額です(172条の4)。発行開示違反の場合とは異なり、継続開示の虚偽記載に対する課徴金については罰金との調整規定が置かれています(185条の7、185条の8)。これらの場合の課徴金に利得の吐き出しを超える制裁部分があることを考慮したものです。また、継続開示書類の不提出も課徴金の対象とされました。その額は、有価証券報告書の場合、不提出により監査費用を節約できたと考えて直前事業年度の監査報酬額を基準に算定されます(172条の3)。
有価証券を上場する金融商品取引所は、上場証券の発行者に対し、投資判断にとって重要な会社情報が生じた場合に直ちにその内容を開示することを、上場規則によって義務づけています。また、取引所が発行者の会社情報について照会を行った場合には、発行者は直ちに回答しなければならず、取引所が必要と認めたときは、発行者は照会に係る事実を直ちに公表しなければなりません。これらをタイムリー・ディスクロージャー(適時開示)といいます。タイムリー・ディスクロージャーは、発行者と取引所・報道機関を結ぶネットワーク(TD-netなど)を用いて行われ、取引所のホームページ上に公開されます。開示を要する会社情報としては、インサイダー取引の重要事実とほぼ同じものが列挙されています。
インサイダー取引規制では、インサイダーによる取引さえなければ、会社は情報を開示しないことが許されるのに対し、タイムリーこアイスクロLンヤーでは、重要な会社情報が発生した場合、インサイダー取引が行われていなくても情報を開示しなければなりません。開示情報が多いほうが投資家の利益になりますが、早すぎる情報開示が会社すなわち株主の利益を損なうことがないかという懸念もあります。アメリカでは、発行者がアナリストなど特定の者に対してのみ情報を開示することが問題視され、SEC(証券取引委員会)は2000年にフェアーディスクロージャー・ルールを制定し、情報の選択的開示を禁止しました。
日本ではタイムリー・ディスクロージャーのルールが厳しいため、情報の選択的開示は、それが重要な会社情報に関するものであれば、すべてタイムリー・ディスクロージャー違反となります。発行者がタイムリー・ディスクロージャー違反した場合、取引所は、①開示注意銘柄への指定と公表、②改善報告書の提出命令と改善報告書の公表、③上場違約金の徴収、④上場廃止の四段階の措置をとることができます。タイムリー・ディスクロージャーは取引所の自主ルールなので、違反に対して刑事罰や課徴金は科されません。開示が遅れた場合や開示情報に虚偽または誤解を生じる記載があった場合に発行者やその役員に投資家に対する民事責任が生じるかどうかは、判例もなく、難しい解釈問題です。
2014年9月12日金曜日
2014年8月18日月曜日
世界を恐慌から救う救世主
BRICSとは、もともとは米国の投資銀行ゴールドマンーサックスが作った造語である。中・長期的に高い経済成長が期待できる有望市場として四力国に注目した、発音の歯切れのよい呼び名だった。だが、経済力にとどまらず、四力国がグループとして政治的な影響力もつかもうとする意図が表れ始めている。それは「G4」を作ってみせたブラジルのしたたかな動きの中にもうかがえる。本番の十一月の金融サミットでは、インドのシン首相もブラジルに口調を合わせた。日米欧の先進国が中心のG8体制について「時代の要請を満たすには十分ではない」と断言。一方、ロシアのメドページェフ大統領は、国際金融システムの改革は、G7やG8ではなく、G20の場で議論すべきだと提案した。
ロシアはG8にもG20にも参加する立場だが、あえてブラジルなど新興国の側に寄った姿勢を示したことになる。日米欧が今後は十分な指導力を発揮できないと読んだうえで、経済外交の舵を微妙に新興国との共同歩調の路線に転換したと解釈することもできる。だが、新興四力国の中で最も強烈に世界に存在感を印象づけたのは、中国だった。サミット開催の直前に、北京の中国政府は総額四兆元(約五十七兆円)にも上る内需の喚起策を発表。需要が落ち込む日米欧に代わって世界を恐慌から救う救世主を自ら演じて見せた。
中国政府が挙げた公共投資の対象は、中低所得者向けの住宅、農村インフラ、鉄道など交通インフラの整備のほか、医療、教育事業の拡充、環境対策、ハイテク産業の振興など。さらに四川省の大地震の震災復興事業や所得が低い農村部の振興策、税制改革による減税措置、商業銀行の融資規制の緩和も加え、合わせて十分野の総合的な内需刺激策とした。日米欧の各国政府は、こうした中国の政策について金融サミットの前に相談や根回しを受けていたわけではない。中国は先進国から強制されたわけでも、要請されたわけでもない。中国独自の判断で、世界経済を案じ、世界のために中国が取るべき対策を講じたという形をつくって見せたわけだ。
「中国は国際金融市場の安定化において重要な責務を担った」。新華社通信が報じた胡錦濤主席の自信満々の発言が、中国の自負を裏付けている。世界銀行も中国政府による内需拡大、景気刺激策がGDPの伸びに貢献することを認めた。世銀は○八年十一月末に発表した「中国経済季報」の中で、二〇〇九年の中国の成長率を七・五%前後と予測している。ゼロ%もしくはマイナス成長が見込まれる先進国と比べれば、中国が「頼りがいがある存在」に見えるのは当然かもしれない。もはや一枚岩ではない。では、歴史的な国際会議の内幕はどうなのか。金融サミットに事務方として参加した日本政府の幹部は会議の実態をこう解説する。
「G20が新しい枠組みだといっても、それは名前ばかりだ。実際に会議の中で機能しているのは日米欧だけ。共同宣言や行動計画などの文書を練り上げる作業は、ほとんどG7の官僚が徹夜でこなした。新興国の政府は金融に関する政策の知識もノウハウもなく、先進国の議論についてこられなかった」実態は確かにそうなのかもしれない。とはいえ、今のグローバル経済の現実を見れば、「主役」だった日米欧の力の相対的な衰えは明らかだ。世界の経済成長への先進国の寄与度は全体の約三分の一まで落ちている。
ロシアはG8にもG20にも参加する立場だが、あえてブラジルなど新興国の側に寄った姿勢を示したことになる。日米欧が今後は十分な指導力を発揮できないと読んだうえで、経済外交の舵を微妙に新興国との共同歩調の路線に転換したと解釈することもできる。だが、新興四力国の中で最も強烈に世界に存在感を印象づけたのは、中国だった。サミット開催の直前に、北京の中国政府は総額四兆元(約五十七兆円)にも上る内需の喚起策を発表。需要が落ち込む日米欧に代わって世界を恐慌から救う救世主を自ら演じて見せた。
中国政府が挙げた公共投資の対象は、中低所得者向けの住宅、農村インフラ、鉄道など交通インフラの整備のほか、医療、教育事業の拡充、環境対策、ハイテク産業の振興など。さらに四川省の大地震の震災復興事業や所得が低い農村部の振興策、税制改革による減税措置、商業銀行の融資規制の緩和も加え、合わせて十分野の総合的な内需刺激策とした。日米欧の各国政府は、こうした中国の政策について金融サミットの前に相談や根回しを受けていたわけではない。中国は先進国から強制されたわけでも、要請されたわけでもない。中国独自の判断で、世界経済を案じ、世界のために中国が取るべき対策を講じたという形をつくって見せたわけだ。
「中国は国際金融市場の安定化において重要な責務を担った」。新華社通信が報じた胡錦濤主席の自信満々の発言が、中国の自負を裏付けている。世界銀行も中国政府による内需拡大、景気刺激策がGDPの伸びに貢献することを認めた。世銀は○八年十一月末に発表した「中国経済季報」の中で、二〇〇九年の中国の成長率を七・五%前後と予測している。ゼロ%もしくはマイナス成長が見込まれる先進国と比べれば、中国が「頼りがいがある存在」に見えるのは当然かもしれない。もはや一枚岩ではない。では、歴史的な国際会議の内幕はどうなのか。金融サミットに事務方として参加した日本政府の幹部は会議の実態をこう解説する。
「G20が新しい枠組みだといっても、それは名前ばかりだ。実際に会議の中で機能しているのは日米欧だけ。共同宣言や行動計画などの文書を練り上げる作業は、ほとんどG7の官僚が徹夜でこなした。新興国の政府は金融に関する政策の知識もノウハウもなく、先進国の議論についてこられなかった」実態は確かにそうなのかもしれない。とはいえ、今のグローバル経済の現実を見れば、「主役」だった日米欧の力の相対的な衰えは明らかだ。世界の経済成長への先進国の寄与度は全体の約三分の一まで落ちている。
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