2015年10月13日火曜日

農業も先端技術産業

農業も先端技術産業である。農業は典型的な先進国型産業であり、きわめて技術集約的、頭脳集約的な産業であるといわれる。世界を見ても、農産物の輸出国はアメリカとヨーロッパが中心だ。大分県の一村一品である豊後牛をとってみても、交配によっていかに良い牛を作るかというのは遺伝子工学の範躊である。牛が一年に一頭しか出産しないのを、人工受精で出産回数を増やす、双子の出産にする、優秀な精子を冷凍保存しておくといった技術、さらには飼料配合の問題など、いずれもきわめて高度な研究と技術、か必要とされる。

 農業は、動物学、植物学、土壌学から遺伝学、気象学、はては機械工学やエレクトロニクスまでの広範な知識を必要とするシステム産業である。農業だけに限らない。林業も、良質の木材をいかに省力化して作るか。シイタケの生産性をどう高めるか。水産業も「獲る漁業から作る漁業へ」といわれている。

 大田村は、国東半島の中央部にある人口二一OO人あまりの小さな村である。とりたてて産業のなかった過疎の村が、いまでは一年中、生シイタケを東京へ出荷している。大分では一キログラム一三〇〇円程度の生シイタケが、東京の市場でなら一二〇〇円にもなる。航空輸送費は一〇〇円程度。東京で一四〇〇円で売れればペイするのに、実際にはそれより七〇〇円も高く売れている。

 東京の物価が高いこともある。しかし、それ以上に「情報価値」が加わっているのだ。生シイタケは優れた健康食品というレッテルがつけられている。ガンの予防にもなるともてはやされたこともある。果物でも野菜でも、新鮮で、無農薬で、ということになれば値段を高くしても売れる。

 農業後継者が東京のデパートにいって驚いた。無農薬のふれ込みで売られているキャベツが虫食いだらけで、しかも目玉が飛び出るほど高い。虫食いをありがたがって食べる都会の人たちに驚くが、「こんなものは家の畑に転がっているよ」という若者たちの話もおもしろかった。