2014年12月13日土曜日

樹木の葉の総面積

光合成によって、一キログラムの植物体をつくるために、平均して六キログラムの一酸化炭素を吸収し、二キログラムの酸素を放出しています。一本の森林についてみますと、一ヘクタール当たり、一年間に、二酸化炭素を十五トンから三○トン吸収し、酸素を一一トンから二三トン放出しているといわれています。熱帯雨林については、もっとずっと人きな量になります。地球温暖化の問題で森林が大きな役割をはたしていることをみてきましたが、それは、樹木が光合成作用を通じて人気中の二酸化炭素を人量に吸収して、大気中の二酸化炭素の蓄積を減らしているからです。

 植物体が光合成をおこなうさいに大量の水を必要とします。植物体は、太陽が吸収したエネルギーを使って光合成をおこなうわけですが、その大半は、植物体の表面から水を蒸発させるための気化熱として使われます。夏の暑い日中でも、森林のなかはひんやりとした快適な温度が保たれているのは、このためです。

 森林に降った雨は、樹木の葉にさえぎられてゆるやかに地表に落ちてきます。はだかの地面では、雨水の大部分が、ときには土も一緒になって、流れてしまいます。しかし、森林では、雨水は土のなかに深くしみ込んで、根から吸い上げられて、光合成を通七て樹木の生育をたすけ、葉から蒸発します。

 森林では、樹木の葉の総面積は、土地面積よりはるかに大きいのが普通です。熱帯雨林では、七倍から八倍になるといわれています。このようにして、森林は大量の水を土のなかに貯めておいて、地中深くのびている根によって水を吸い上げ、葉から大気中に蒸発させているのです。森林に降った雨水はまた、地下水となり、やがて、渓流や湧水となって流れ出ます。森林から地下の土壌を通って地下水となった水は、冷たく、澄んで、この上もなくおいしい水となっています。

 土は、砂、粘土、有機物が混じり合っています。水が土のなかを通るとき、不純物は途中で上に引っかかって取り除かれ、塩分や重金属などは、粘土や有機物にくっついて、きれいな水となります。土のなかには数多くの微生物、小動物、樹木の根などが生きています。これらの生物は、呼吸するとき二酸化炭素を出しますから、土のなかを通る水には二酸化炭素が多く含まれ、またカルシウム、マグネシウムなどのミネラルが適度に含まれています。森林から湧き出した水がおいしいのはこのためです。しかも土は浄化力をもっていますから、おいしいだけでなく、衛生面からもすぐれています。

 森林の上は、上の粒子と粒子の問にさまざまな大きさの孔隙をもっています。雨水は、この土の孔隙のなかにたまるわけです。スリランカという国を皆さんご存じだと思います。いまから二〇〇〇年近く前に、世界でもっとも高度に発達した水利文明をもっていたといわれています。十六世紀のなか頃、ポルトガルに侵略され、そのあとイギリスの植民地となってしまいました。