2013年11月7日木曜日

マントラや賛歌を斉唱する

次に「スーリヤーナマスカール」という太陽に捧げる祈りを行なう。これは昇り行く朝日や、沈み行く夕日に対して、マントラを唱えながら、合唱した手を天に突き上げたり、腕立て伏せのようなことをしたりするヨーガの一種で、RSSのシャーカーに限らず広くインド全土のヨーガ道場などで行なわれているものである。さらに、これに続いて、さまざまなヨーガや武術の訓練が行なわれる。この訓練の中では、タンターといわれる竹製の警棒を用いた武術の訓練か中心となることが多い。このタンターの訓練では、列を作り号令にあわせて竹製の棒を振りかざしたり、方向転換をしながらその棒を振り下ろしたりする。私の調査したシャーカーでは、型を習得することに力点がおかれており、実践的な訓練はあまりなされていなかった。そのためかどうかはわからないか、彼らは概してそれほど強くない。

 剣道と柔道を少しかじったことのある私は、彼らに何度か勝負を挑んだことかあるか、いつもものの数秒でけりがつく。私か剣道の構えをした瞬間に、彼らの腰は引けてしまい、竹の棒を振りかざした瞬間に後退してしまう。あとは鬼ごっこのように追い掛け回し「かった」と言わせるだけである。また一度、生意気な若いメンバーを背負い投げで投げ飛ばしたことかあったか、その時以来、私はそのレヤーカーで一目置かれるようになった。「タケシは強いな。やっぱりジャッキー・チェーンの国から来ただけはある」

 「いやいや、ジャッキー・チェーンは香港の人だよ。俺は日本人」そんなことを言いながら、みんなで笑いあっている。「これで戦闘に行けるのだろうか?」と、こちらか逆に首を傾げてしまう。そして、その後、カバディなどのインドの伝統スポーツを行なう。これはかなり楽しい。みんな真剣になってやるので、私もつい夢中になり、息が上がるぐらいまで走り回ってしまう。調査をしていることをすっかり忘れて、ゲームに勝つことに集中してしまう。ここまでのトレーニングを終えると、夏場はたいてい汗でぐっしょりになる。このようなトレーニングを毎日毎日、朝夕の二回続けることは予想以上に大変である。日本で朝方に寝て昼前に起きる不健康な生活を送っている私にとっては、かなりきつい。

 さて、このような身体訓練の後、知的訓練か始まる。この知的訓練は、多くの場合、全員か一つの輪になり、座った状態で行なわれる。まず、選ばれた人物かマントラや賛歌を斉唱し、その後を追う形で、参加者全員かそのマントラや賛歌を同様に斉唱する。それか終わると、教育係による訓話か始まる。この訓話は、ヒンドゥーの神々の話やマントラの意味の説明など、宗教訓話であることか多いか、時にはインド独立運動の志士をたたえる話や歴史的英雄の話などかされることもある。また、ここでRSSの主催するイベントの情報などか通知され、それへの動員が図られる。これに続いて、教育係とメンバーの問答が交わされる。これは、教育係が質問を出し、指名されたメンバーが答える形で進められる。ここでは、出された質問に対して、メンバーは決められた答えを正確に答えることが要求される。さらに、この後、参加者全員での討論会か行なわれる。ここでは、日常生活に関することから政治の話まで、幅広い話題か討論される。

 最後に、再び参加者全員か整列しマントラを唱え、全員で声を合わせて「バーラトーマーター・キージャイ」(「母なるインドに勝利を」の意)と唱える。そして、立てていた旗をたたみ、それに一礼して一回のシャーカーが終わる。「回れ右!」このシャーカーに参加していて私か最も驚いたのは、整列・行進の訓練の時である。アヨーディヤーのシャーカーに参加する若者達は、概して、この整列・行進か上手くできないのである。まず、号令にあわせて同じ行動をとることか上手くない。「全体、前へ進め!」そうグループリーダーが声をかけても、必ず数人の出だしの一歩目のタイミングか狂う。そうすると後ろの人間が前の人間とぶつかり列が乱れ、収拾かつかなくなる。これか毎日毎日続き、教育係がいつも大声でしかる。さらに、行進をする際に、手と足の動きか揃うことなど、まずもってない。数人は右手と右足、左手と左足が一緒にでる。二、二、一、二」と声をかけなから行進をするか、声と手足の動きかうまく合っておらず、全体が全く揃っていない。